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会津が直面している『いま』とは
QRコードを読み込むことで、お米に含まれる放射性物質量など情報が分かるようになっている。風評を打破する為に、正しい情報を提供し、安全性を開示している

QRコードを読み込むことで、お米に含まれる放射性物質量など情報が分かるようになっている。風評を打破する為に、正しい情報を提供し、安全性を開示している

福島県を3つの地域に分けたうちの最も内陸部にあり、山岳地帯に囲まれた広大な盆地が広がる会津地方。豪雪地帯でもあり、日本の原風景たる郷土の営みが息づいています。

会津地方にある市町村の一つ、会津美里町は、古い歴史と美しい自然に恵まれた町。高田梅や朝鮮人参などといったこの地ならではの農産物や、会津発祥の起源に由来する伊佐須美神社、東北最古の焼き物として知られる会津本郷焼、野口英世博士ゆかりの中田観音などの由緒ある神社仏閣といった、独特な地域文化を培っています。町の北部には、肥沃な土壌の平野部を持ち、豊かな田園風景が広がっているのも特徴。品質の高さで定評のあるお米や多彩な農産物を産出していますが、東日本大震災直後には一部野菜の出荷及び摂取が制限されたほか、風評被害による取引き停止などがありました。現在は、きめ細かく徹底した放射性物質の調査などを実施し、安全面で問題が無いことが明らかになっていますが、未だ以前のような取引量を取り戻せていないのが現状です。

会津地方観光のシンボル、鶴ヶ城が美しい佇まいを見せていた。

会津地方観光のシンボル、鶴ヶ城が美しい佇まいを見せていた。

東京電力福島第一原発事故の影響は、農作物だけでなく観光産業にも大打撃を与えています。会津若松市もまた、震災自体による目立った被害はなく、早期に平静を取り戻しました。発電所から約100キロメートル以上も離れ、その間には阿武隈山系、奥羽山脈などの大きな山脈が連なっていることなどから、ほぼ放射線の影響は無く、高齢者の方や子どもたちも健康的に生活しています。原発事故発生時には、大熊町から住民を受け入れ、復興に向けた最大限の支援も行いました。

しかし、平成23年に会津若松市を訪れた観光客の総数は235万人で、平常時の平均の350万人と比較すると115万人以上の減少。かつては、会津藩の象徴である鶴ヶ城を中心に、歴史ドラマの舞台として人気を集めた会津若松市ですが、余震への不安や全国的な自粛ムード、放射線への不安によって、県外からの観光客の足が遠のき、団体旅行を差し控える状態に陥りました。修学旅行などの教育旅行に関しては、周辺の県を中心に年間841校もの県外の小中学校が来訪していましたが、平成23年は100校までに激減。最も大きな影響を受けたのは飲食・宿泊業者で、約90%売上げが減少し、なかには震災前の10%にまで落ち込んだホテルもあったそうです。

農業と観光は、会津地方における最も重要な産業。この未曾有の事態をいかに切り抜けるかが、地元の方々の目下の優先課題となっています。

'手塩にかけて育てた米を安心して食べてもらうために' 農業生産法人 株式会社 米夢の郷 取締役総務部長兼工場長 猪俣 道夫さん
'手塩にかけて育てた米を安心して食べてもらうために' 農業生産法人 株式会社 米夢の郷 取締役総務部長兼工場長 猪俣 道夫さん

農地保全と農業従事者育成を目的に、会津美里町や会津美里振興公社、農業者、食品会社などの一般企業で設立した農業生産法人。安全でおいしい会津米の安定供給を目指しながら、白い発芽胚芽米、早炊き加工米といった現代のニーズにマッチした健康志向の商品を製造販売しています。震災直後、調査があまり行われていなかったのにも関わらず、主に関西方面の業者から一方的に取引がストップされたことを始めに、風評被害の大きな壁が立ちはだかってきました。取引再開のために、徹底した製品検査を求められていますが、そのために費やす経費がかさみ、販売価格にも影響。その悪循環に悪戦苦闘している状況です。

株式会社 米夢の郷HP
http://maimunosato.jp

'地道なPR活動で放射線への不安を払拭' 会津若松観光物産協会 統括本部長  渋谷 民男さん (写真 左) 会津東山温泉 原瀧・川どこ・今昔亭 総支配人 平賀 茂美さん(写真 右)
'地道なPR活動で放射線への不安を払拭' 会津若松観光物産協会 統括本部長  渋谷 民男さん (写真 左) 会津東山温泉 原瀧・川どこ・今昔亭 総支配人 平賀 茂美さん(写真 右)

会津若松市における観光の魅力を広く発信している他、教育旅行の支援を行っている会津若松観光物産協会。これまで、県外から年間841校もの小中学校の教育旅行を受け入れてきましたが、東日本大震災以降、その数は激減。現地の安全性を訴えるために協会職員が学校を訪ねるなど地道な活動を続け、徐々に取り戻しつつあります。そして、奥羽三楽郷の一つに数えられ、会津若松の奥座敷として名高い会津東山温泉。20軒ある温泉宿のなかで「原瀧」「今昔亭」、湯川の沿岸に設置された野外の食事処「川どこ」は、観光客に特に人気の高い観光施設です。震災直後は、福島第一原子力発電所の1~4号機のあった大熊町の住民を受け入れて避難所となった場所でもあります。ここもやはり宿泊客が大幅に減り、経営に深刻なダメージを受けましたが、活路を切り拓くため集客のための努力を続けています。

会津若松観光ナビHP
http://www.aizukanko.com

會津東山温泉 原瀧HP
http://www.yumeguri.co.jp

'会津の素晴らしさをより一層知ってもらう観光を' 一般財団法人 会津若松市観光公社 観光推進企画グループ リーダー  新井田 信哉さん(写真 左) 閣内解説ガイド員  遠藤 優貴さん(写真 右)
'会津の素晴らしさをより一層知ってもらう観光を' 一般財団法人 会津若松市観光公社 観光推進企画グループ リーダー  新井田 信哉さん(写真 左) 閣内解説ガイド員  遠藤 優貴さん(写真 右)

鶴ヶ城や御薬園などを保全・管理し、物産販売やまちの駅として機能している会津町方伝承館の運営を行っている会津若松市観光公社。会津の歴史や伝統文化を学ぶ上で重要な拠点である鶴ヶ城もまた、震災以後は見学者の数が減ってしまいました。そのため、城址公園内に放射線の空間線量を測定する機器を取り付けるなどして、安全面のアピールを行っています。今年は、地元を舞台とするNHK大河ドラマ「八重の桜」が放映されたため、見学客の数が増加。遠藤さんをはじめとするガイド員の方々は、園内施設のわかりやすい説明に努めながら、より一層会津の素晴らしさが伝わるよう解説に工夫を重ねています。

一般財団法人 会津若松市観光公社HP
http://www.tsurugajo.com

郷土の誇りを、また味わってもらいたいから。