それは、東北と日本中を笑顔でつなぐプロジェクト
取材一覧を見る
双葉町応急仮設南台自治会 自治会連絡協議会会長 齊藤 宗一さん 町民たちの絆を再び結び、故郷の暮らしを実現するために。
中学生一人ひとりに、うれしそうな笑顔で話しかけ、仮設住宅の敷地内を案内してくれました。

伊澤史朗町長とともに、次に向かった先は双葉町応急仮設南台住宅。バスの到着を待っていたのは自治会長の齊藤さんです。中学生一人ひとりに、うれしそうな笑顔で話しかけ、仮設住宅の敷地内を案内してくれました。そして、その先には、真っ黒な秋田犬が。「カワイイ!」と盛り上がる女子中学生たち。「この、“まる”は震災前から飼っていた愛犬です。震災で避難した時に置き去りにしてしまい、自分も手術をしたばかりだったので、心配でしたが迎えに行けなかったんです。そのまま、千葉や神奈川、埼玉、東京と避難先を探し、やっと長男の入居先が決まった時、女性誌に“まる”の記事が載っていたのを見つけました。名古屋の親切な方が預かっていると聞き、無事なのを知って本当にうれしかったですね」と、目を細めながら“まる”を見つめます。中学生たちも一人ずつ撫でてあげると、元気にしっぽを振る“まる”。そこへ、柴犬の“モモ”も登場し、ますます賑わいが増しました。「こんな状況ですから、可愛い犬が側にいるのはとても心の支えになります。住民の方も、犬を通して会話が弾んだり、和む雰囲気が生まれたりしますから、大切な存在ですね」と、齊藤さんは語ってくれました。

可愛い犬が側にいるのはとても心の支えになります。

そして、仮設住宅の憩いの場である「双葉町サポートセンター ひだまり」へ。ここでは、齊藤さんから、震災当日からこれまでのエピソードを教えてもらいました。特に印象的だったのは、やはり愛犬“まる”との再会。中学生が、「また会えて、どんな気持ちでしたか?」と聞くと、「“まる”は家族同然。家に繋いであったので、すぐに戻って連れてくればいいと思っていました。でも、そのまま長い時間が経ってしまい、半ば諦めていましたが、再会できて希望が生まれました」と齊藤さん。仮設住宅の暮らしについても質問し、「プレハブの建物が、思った以上に生活の騒音が伝わりやすくて、夜、家族で話すのもはばかれます」と困惑した表情。「やはり、双葉町の自宅に帰りたいですか」と問うと、「私の家は、16代、600年以上続いた伝統があります。だから、必ず後世に引き継がなければいけないという使命を持っているんです。それに、どんなに優れた家でも、自分が生まれ育った土地にある、住み慣れた家ほど良いものはありません」と、熱を帯びた口調で話してくれました。その思いを耳にして、真剣な表情となった伊澤町長も「この震災で、3,000人以上が10ヵ所以上もの避難所でバラバラになってしまいましたが、また地域で一緒になりたいという気持ちは一緒です。2014年4月から、町立の幼稚園と小中学校をいわき市内で再開させますが、町の子どもたちがまた一緒に勉強したり遊んだりできて、本当にうれしく思っています。でも、双葉町にとって、本当の復興は安全なふるさとで日常の生活を送れるようにすることです。そのために、除染作業が早く進むように国への働きかけをするなど、真の復興に向けて頑張っていきたいです」と力強く語りかけてくれました。

双葉町サポートセンター ひだまり

町の『いま』を伝え、復興の道のりを目指すための拠点へ。

失ったからこそ気づいた、日常にあふれる大切なもの。