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釜石東中に三鉄ThankYouFromKAMAISHI模型の売上げの一部寄付

  • いわて
  • 2020年12月14日

東日本大震災から9年9カ月を迎えた12月11日、震災復興支援への感謝を世界に発信する企画ThankYouFromKAMAISHIの一環で三鉄車両のラッピング列車デザインに取り組んだ、釜石市鵜住居町の釜石東中に、同列車の模型の売上げの一部の65万8350円を寄付しました。

 

ラッピング列車の鉄道模型はトミーテックが今年9月末から限定1千個で全国発売。寄付金贈呈には、花王グループカスタマーマーケティング東北支社岩手支店長の菅野浩之さんと同支店マネジャー庄司哲也さんらが同校を訪れ、ラッピング列車制作に関わった最後の学年で、生徒代表の佐々木太一(3年生)さんに手渡しました。

釜石東中の職員室前に設けられた♯ThankYouFromKAMAISHIコーナーの前で生徒代表の佐々木太一さんに寄付金を手渡す菅野浩之支店長

 

同校の生徒たちは、2017年11月から約1年3カ月間、全14コマの活動を通し、ラッピング列車デザインのほか、鵜住居駅の愛称応募(生徒の案である「トライステーション」に決定)、駅待合室の装飾などを手掛けました。

全国発売中のThankYouFromKAMAISHIラッピング列車の鉄道模型セット

 

デザインは、花王作成部門パッケージ作成センターファブリック&ホームケア担当部長の椎木一郎さん、同部のデザイナー矢野龍親さん、尾崎真理子さんが講師となり指導に当たりました。

 

全校生徒一人一人が描いた感謝を表す笑顔の絵をつなげたデザインとし、16カ国語で「ありがとう」を表現。昨年3月の三鉄リアス線開業に合わせてデビューし、8年ぶりの鉄路復旧の喜びに包まれる中での運行開始となりました。

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新型コロナウイルス感染防止のため、椎木さんたちは今回の寄付金贈呈に東京から来県することは、残念ながらかないませんでしたが、鉄道模型販売開始の際、生徒から感謝の言葉が寄せられました。

 

感謝の言葉を寄せてくれたいずれも3年生の(左から)大丸碧仁さん、井上右望さん、佐々木太一さん、三浦花音さん

 

この度は、ぼくたちがデザインした列車のトミックスをつくっていただき、ありがとうざいました。当時、ぼくたちは1年生で自分たちがデザインした列車が走っている姿を見たときは、とても感動したことを覚えています。花王のみなさんのおかげでとても良いプロジェクトになったと思います。本当にありがとうございました。

釜石東中3年 大丸碧仁(だいまる・あおと)

 

先輩方と作り上げたラッピング列車をミニチュア化して作っていただき、ありがとうございました。私も小さいころから列車が好きだったので、一目見た瞬間に感動しました。私たちはこれからも復興活動に貢献していけるよう頑張ります。

釜石東中3年 佐々木太一(ささき・たいち) 

 

今回はこのような素敵な機会をつくっていただいてありがとうございました。また活動のとき自分たちはまだ1年生でしたが、今でも楽しく活動したのを覚えています。いい思い出を本当にありがとうございました。

釜石東中3年 井上右望(いのうえ・うみ)

 

ラッピング列車の模型を作っていただき、ありがとうございます。みんなでデザインを考えたり、話し合ったり、他にもたくさん素敵な思いでになりました。本当にありがとうございました。

釜石東中3年 三浦花音(みうら・かのん)

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19年秋に学校の目と鼻の先にある釜石鵜住居復興スタジアムで開かれたラグビーワールドカップの際は、このラッピング列車にも多くの人々が乗車し、「トライステーション」に降り立ち、スタジアムに向かいました。ラッピング列車は現在も運行中で、市民に親しまれています。

 

鵜住居町は釜石市内で最も犠牲になった方が多い地域ですが、震災前から防災活動に積極的に取り組んできた同校の生徒の模範的な避難行動で多くの命が助かりました。

 

今回の寄付金贈呈に先立ち、菅野支店長、同校の米慎司校長、生徒代表の佐々木太一さんが、震災から今日に至るまでのことや、伝承、防災活動などについて語りました。

 

【菅野浩之支店長】

「皆さんが伝える記憶によって、助かる命がきっとある」と話す菅野浩之支店長

 

釜石に来るたびに思うのは、釜石東中の皆さんもそうですが、若い方々が、震災の記憶や歴史をしっかり語り継いでいるということです。

みなさん方が、先輩から聞いた言葉を自分の言葉にして後輩に話すことで、自分の記憶になるとともに、次の世代の記憶になっていきます。今後も、人間では防ぎようがない災害が起きるかもしれませんが、皆さんが伝える記憶によって、助かる命がきっとあるのではないかと思います。

岩手の方々は三陸鉄道に対し、地域の足ということだけではなくて、特別な思いを寄せていることを感じています。中学生の皆さんはこれから大人になり世界に羽ばたいてくと思いますが、美しい三陸を三鉄の車両が走っている様子は、きっと心の中の古里の風景になるのではないでしょうか。

春に三鉄にヘッドマークをスマイルとうほくプロジェクトから贈呈させてもらったのですが、そこに書いている言葉は「何度でもともに前へ」です。花王グループは世界に1万6千人くらいいます。みんなが釜石のことが大好きで、今日、本当は東京から来たかった方々もいます。(新型コロナウイルス感染防止を考慮し)来ることを控えた人たちの思いも背負ってきました。

釜石の人たち、東北の人たちと様々な活動を一緒になってやってきたのですが、今、目に見えない不安に襲われ、当たり前のことができなくなってしまっています。それでも超えられない困難はないと思っています。私たちはいつも一緒にいるつもりでいるので、忘れないでいてほしいです。ともに前へ進みましょう。

 

 

【米慎司校長】

生徒たちが「助けられるより助ける人へ」という目標のもとで防災活動に取り組んでいることを紹介する米慎司校長

 

東日本大震災が発生した当時の中学生が後に「釜石の出来事」と言われる率先した避難行動をした生徒たちでした。太一君をはじめ、現在の中学3年生は幼稚園や保育園の年中でした。先輩に手を繋がれて逃げた子もいたと思います。今、先輩から勉強したことを、後輩につなぐ取り組みをしています。彼らは「助けられるより助ける人へ」という目標のもとでやってきています。

たくさんの方々からご支援をいただいて、ここまでやってこられたことも生徒たちは十分にわかっています。生徒会としても「感謝の気持ちを忘れずに」という合言葉で活動しています。大変ありがたいプロジェクトに参加させていただき感謝しております。

自分たちが手掛けたラッピング列車がまちを走る様子を目にしている生徒たちは、きっと大人になってから、釜石のまちのまちづくりに貢献してくれるのではないかと期待しています。

 

【生徒代表 佐々木太一さん】

「あのとき、あの人たちが助けてくれて、いろんな人たちが関わってくれたから、今の自分がある」と感謝する佐々木太一さん

 

僕自信は震災のことは、はっきり覚えていませんが、(高台にある)高速道路に逃げたことも覚えていますし、東中学校の先輩方のことは、顔までは覚えていませんが助けてくれたことを覚えています。

「自分が中学生になったときに、もしこういうことが起きたら、ちゃんと助けられるかな」と思いながら小学校生活を過ごしてきて、実際に中学校に入ると、真剣に防災学習に取り組む先輩方の姿を見て、こういう姿勢だからこそ、あのときちゃんと逃げられたのだなと実感しました。

今、こうして自分が過ごせているのも、「誰か」に助けてもらったからです。ラッピング列車などでお世話になった花王さんもそうですし、いろんな人たちが関わってくれて、それで自分がこういう体験ができていることを実感しています。

本当にいろいろな人に助けてもらってきたことを実感しています。今後、こういう体験が無いかもしれないし、あるかもしれません。これまで助けてくれた人たちのことをしっかり覚えておいて「あのとき、あの人たちが助けてくれたから、今の自分がある」といこうことを胸に刻み、これから何かが起こったとしても、助けてくれた人たちと同じことができるように、防災学習などを一生懸命取り組んでいきたいと思っています。

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寄付金贈呈前のわずかな時間でしたが、復興の歩を進める鵜住居のまちを眺めることができる一室で、心を通わせたひとときとなりました。寄付金は、活動に関わった卒業生や3月に巣立つ現在の3年生から母校への「感謝の贈りもの」になるものと思います。

(岩手日報社釜石支局 千葉隆治)

 

 

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