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仙台市の防災計画 震災被害を最小限にくい止める、仙台市の防災対策とは。

次に向かった先は、河北新報社の社屋。1階ホールでは、仙台市の防災について語ってくれる4名の講師が待っていました。

まずは、仙台市危機管理室減災推進課の那須さんより「仙台市の防災計画」について語っていただきました。東日本大震災における被害状況の概略をスライドとともに説明。そして、震災当日、大いに問題となった帰宅困難者への対策を講じる重要性にも言及しました。実際に避難所の運営を行った際、問題となった点をいくつか挙げ、一時滞在場所を設置する時の課題も提示。その中で示した基本方針の一つ、「女性の視点も入れた運営」にロザン菅さんは特に関心を持ったようです。「避難所では、男性の意見が強かったんですか?」という問いに、那須さんは「作業を行う男性主導になりがちだったので、非常時だからこそ女性への細やかな配慮が必要だと感じました」と答えました。また、中学生に向けて「学校に設けられた避難所では、水くみや重い荷物の運搬などで中学生が大人以上に戦力となりました。みなさんも避難者を支える力となってください」とエールを送りました。

仙台市地震防災アドバイザーの針生さんは、中学生記者たちに、震災時に必要となりそうなものを9つのマス目に書き出してもらい、ビンゴゲーム方式で確認しました。箱から引き当てた答えが読み上げられ、次々と「リーチ!」のかけ声が聞こえてきますが、なかなかマス目が繋がりません。それは、みんなの想定外の物が多かったから。濡れても消えず、重要な情報を書き伝えるのに便利な「油性ペン」という答えには、「そんなものが!?」と会場がざわめきました。その他、非常持ち出し袋の中身の吟味や新聞紙で作る簡易スリッパなど、具体的に役立つ震災への備えについても紹介。最後に、「何が何でも自分の生命を守るため、いろいろな知恵を振り絞って生き抜く努力をしてくださいね」という那須さんの言葉に、一堂は深く頷いていました。

楽しく学ぶ、防災ビンゴ。新聞もいざという時に役立ちます。折りたたんでスリッパに
楽しく学ぶ、防災ビンゴ。新聞もいざという時に役立ちます。折りたたんでスリッパに

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「新防災教育副読本 3・11から未来へ」と題された冊子を携えて壇上に立ったのは、仙台市教育センターの須藤さん。この副読本を作成した目的を示し、6つの章で構成された内容の概略を語ってくれました。そして、テキストのページをめくりながら、仙台市立南中山中学校と仙台市立館中学校、2校の取り組みを紹介。南中山中学校で行っている「救急救命講習」や「DIG研修(災害図上訓練)」といった高度な講習は、写真スライドとともに教えてくれました。また、館中学校で実施した地域防災訓練の模様は、真剣に取り組む中学生たちの姿が、中学生記者たちの目に印象深く映ったようです。自分の命を自ら守る“自助”、お互い助け合う絆の大切さ“共助(きょうじょ)”という2つの言葉が、会場にいたすべての人の心に刻まれました。

最後に講演を行ったのは、宮城県建設業協会理事・仙台建設業協会副会長の深松さん。まずは、自身が代表取締役社長を務める深松組が、震災当時手がけていた仙台市若林区藤塚地区の築堤工事についてふれ、津波発生から仙台建設業協会災害措置対応対策本部の設置、道路の堆積物除去、行方不明者の捜索、がれきの撤去など、一連の流れを臨場感あふれる語り口で紹介しました。特に、真に迫っていたのが、津波被害の凄まじさと、たくさんの遺体と向き合わなければいけない苦痛。中学生記者たちが、思わず息を飲む瞬間が幾度もありました。そして、阪神淡路大震災を経験した西日本の人たちの迅速な救援や、同じく大地震を経験した台湾からの多大な支援を紹介し、“感謝報恩”の言葉を掲げる深松さん。「世界中から多くの支援をいただいたことに感謝し、その恩返しとして、私たちが教訓として得た津波襲来への備え、スムーズな復旧復興へ向かう準備の大切さを、より多くの人に伝えていければと考えています」と語ってくれました。

今もなお津波の爪痕が残る荒浜で出会った、鎮魂の観音像。

エンターテイメントの魅力発信地であり、帰宅困難者を守る重要拠点。