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スマイルとうほくプロジェクト@ツール・ド・東北【レポート②:花王・齋藤さん】

  • みやぎ
  • 2019年12月4日

 みなさんこんにちは!スマイルとうほくプロジェクト事務局の河北新報社・遠藤です。昨年に引き続き、花王が協賛し、9月14・15日に行われたツール・ド・東北2019に参加してきました。
 前回の花王・外山さんのレポートに引き続き、今回はライダーとして大会とブースの運営に参加した花王・齋藤さんのレポートをお伝えします。



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■レポート②花王 齋藤さん
●参加のきっかけ
 東日本大震災発生時、私は和歌山事業場で勤務していました。和歌山では大きな揺れはなかったものの、振幅の大きい長い揺れとなりました。即座にインターネットで確認し、東北地方を中心とした東日本全体の震度表示を見たときには恐怖で身震いがしました。そして地震発生後の津波被害や福島第一原子力発電所事故のニュースを、なすすべもない気持ちで眺めていたことを覚えています。
 なすすべもない気持ちが変わることのないまま8年が過ぎ、震災に関する記憶は自分の中で風化しつつありましたが、6月に石巻市で復興活動を推進されている方と会う機会があり、それをきっかけに、なんとなく目を背けていた自分を見つめなおそうと思い立ちました。そのタイミングで「ツール・ド・東北」ボランティア&ライダー募集の案内があり、またとない機会だと思い応募しました。
 私と自転車との出会いは震災の時期とほぼ一緒です。足のケガがきっかけで体力づくりを目的に始めましたが、車やバイクと違い、自分の力でぐいぐい走れることに魅力を感じ、趣味として続けています。自転車のスピード感は街や道の変化を感じるのに向いていると思います。今回、津波被害を受けた東北沿岸地域で起きている変化を、自分の足で漕ぎながら、見て、肌で感じて、なすすべもなかった気持ちからの脱却を期し、ライダーとして参加しました。



●1日目 語り部さんと実際の避難経路を辿る
 初日の午前は石巻市の門脇地区を訪れました。多くの住民が避難した経路はとても急な石段で、息切れするほどでした。訪れた日は穏やかな海でしたが、当時は、どれほどの恐怖と闘いながら避難したのだろうか、どんな表情の海を目の当たりにしたのだろうか、もし自分がその場にいたら冷静に避難することができたのだろうかと、語り部さんのお話を聞きながら考えました。
 日和山から眺めた辺りは更地となり、公園として整備が進められています。周囲の道は震災前の街並みを再現して敷設されるそうです。敷地内の「東日本大震災メモリアル 南浜つなぐ館」には震災の記憶として、実際の津波到達の高さを示す碑が立てられていました。私はこれを見上げた時、正直身がすくみました。メモリアル館の資料映像で見た「津波で助かった人々は、助けられなかった命と向き合いながら過ごしている」という言葉が重く心に突き刺さりました。語り部さんの「避難の方法に正解はない、でも最善を尽くすことが何よりも大事」という言葉も心に残りました。



●2日目 チームスマイルとして走る
 9月15日、爽やかな秋晴れの中、チームスマイルの一員として「ツール・ド・東北」に参加しました。初めて参加する大会は、震災の被害にあった沿岸を走らせていただいているという、地域へのリスペクトにあふれていました。スタート前の黙祷に始まり、東北を応援する気持ちで集まったライダーが地元の方に応援され、互いに笑顔があふれているのがとても印象的でした。
 石巻専修大学を出発し、女川駅前のエイドステーションを経て到着した石巻市雄勝町の水浜地区では、地元の方が大漁旗を掲げて応援してくれました。ここでは前日よりメッセージボードの準備をした住民の方々と交流し、一緒にライダーに向かって手を振って応援する機会がありました。自分も沿道に立って応援することで、手を振ったり声をかけてくれたりするライダーからエネルギーをもらえることが実感できたのは非常に貴重でした。東北で勤務する花王グループのライダーは昨年から交流を重ねていることもあり、それがとても羨ましく思えました。

 
途中、大川小学校の跡地に足を伸ばしました。ここでは多くの児童が津波の犠牲となったとても悲しい場所です。津波によって捻じ曲げられた校舎から体育館に続く渡り廊下が今も残されており、改めて津波の恐ろしさと、助からなかった命がそこにあったという事実に、ただただ手を合わせることしかできませんでした。



●2日間を通じて
 「ツール・ド・東北」に参加したことは、本当に貴重な体験でした。石巻専修大学に設営した花王ブースに訪れてくれたライダーや観客の皆様との交流、沿道やエイドステーションでの地元の方々とのふれあい、それぞれの場所が笑顔であふれており、まさに「スマイル」に活気づけられた2日間でした。
 「ツール・ド・東北」は東北を応援したいというライダーと、そんなライダーに沿道で声をかけたい、これまでの支援の感謝を伝えたいという地元の方々との思いが重なったとても素晴らしいイベントであると思いました。
 

 実は私自身、東北の出身者です。震災発生時からなすすべもない気持ちを抱えていましたが、今回の活動を通じて、我が故郷である東北の土地や人々に憧れた方が、一人でも多く現地を訪れるようになってほしいと切に願うようになりました。また、地元に少しでも活気を生むことができたとすれば誇りに思います。今後は私自身が伝道師となり、今を見つめ未来につなぐ活動を推進していきたいと思います。 最後になりますが、私たちライダーを温かく迎え、応援してくださった石巻を初めとした現地の皆さん、機会を作っていただいた関係者の皆さんに深く感謝申し上げます。また東北の地でお会いできることを楽しみにしています。

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