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釜石市立釜石東中学校 生徒会執行部 より多くの人を助けるために、今、学ぶべきこと。
仮設校舎の釜石東中学校

ナビゲーター ロザンの二人を中心に意見交換を進めます。

次に訪れたのは、大槌湾からやや離れた県道沿いにある仮設校舎の釜石東中学校。校庭で元気に遊ぶ、同じ敷地内に移転してきた鵜住居(うのすまい)小学校の児童の姿に微笑ましく思いながら奥へ進むと、生徒会役員5名が緊張の面持ちで一行を出迎えてくれました。

ここではロザンの二人が司会進行を務めながら、意見交換を行います。

まずは、平野美代子先生から、釜石東中学校で取り組んでいる防災教育と震災被害について説明がありました。根浜海岸の近くに校舎があり、釜石市津波浸水予測図では浸水域外となっていた釜石東中学校。それでも、津波による被害を想定して、学校独自の取り組みを実践していました。この中学校のモットーは、“助けられる人から助ける人”。高齢者や要介護者、幼児などを補助しながら災害時に対応できる技術や知識の習得を目指していました。校名の“東”にちなみ、その名も「EASTレスキュー」。簡単な応急処置や救急搬送、防災マップづくりや非常食の炊き出しなど、災害時に全生徒が“防災ボランティースト(ボランティア+イースト[東]の造語)”として活躍できるよう、生徒会が中心となって訓練を行ってきました。なかでも、地域の各世帯へ生徒自身が配布した「安否札」に関する活動への評価は高く、平成21年・22年の2年連続で『ぼうさい甲子園』の優秀賞を受賞しています。他に類を見ない防災意識の高さは、もちろん東日本大震災でも発揮。後に“釜石の奇跡”と評される迅速な避難を実現することができました。

「釜石の奇跡」を生んだ防災教育。学校独自の教育を通じ、中学生が考え、行動することのできる人間となっていく。

「釜石の奇跡」を生んだ防災教育。学校独自の教育を通じ、中学生が考え、行動することのできる人間となっていく。

平野先生の説明の後、中学生たちがそれぞれ自己紹介。そして、まずは中学生記者から質問を投げかけました。津波からどうやって逃げてきたかという質問には、「学校にいた生徒は、みんなまとまって避難しました。その時は、とにかく必死に逃げようと思っていたので、あまり周りの状況がどうだったか覚えていないんです」と生徒会長の小川くん。ロザン宇治原さんは、「焦ってバラバラに逃げたりせず、誰もはぐれなかったというのがすごいね」と感心しきり。「あまりに怖すぎて、自分の命を守ろうと思うだけで精一杯でした」と、副会長の佐々木さんも、そう教えてくれました。また、EASTレスキューについて、日頃どのように気持ちで取り組んでいたかを聞くと、萬さんは「津波の怖さは過去に起きた事例でよく理解していたつもりだったんですが、正直、ちょっと面倒くさいなという気持ちも入り交じっていました。でも、実際に自分が被災してその重要性を知ることができ、また、同じように震災があったとしても、もっと素早く安全に避難できる自信があります」と話してくれました。そして、釜石東中生徒会からも質問。実際に被災地の釜石を訪れて怖いと感じたか聞くと、「そんなことはない」「ちょっと怖いかも」と、それぞれ感想を口にする中学生記者たち。「常識的に、今はもう大丈夫だと理解していても、津波の生々しい痕跡が残っていたり放射性物質についてちらっと頭の中をよぎったりするから、まったく気にならないと言ったら嘘になるかな」とロザン宇治原さんが、みんなの気持ちを代弁してくれました。また、震災直後の混乱についても話題に。不適切な内容のチェーンメールについて、「友達からの親切なメールだと勘違いして、他の友達へ一所懸命まわしてた」というエピソードに、ロザン菅さんは「おまえ、いいやつやなぁ!」とあきれ顔で答え、笑いを誘っていました。このように始終、和やかな雰囲気で進行した意見交換会でしたが、この震災でどんなことが辛かったかという質問に、生徒会長の小川くんが「自分の家が無くなったり、身近な人を亡くしたりしたこと」と答え、彼らが抱える現実の重さに触れ、中学生記者たちは衝撃を受けた様子でした。

また、釜石東中学校は、被災地域の中学校へ写真による体験の場を提供するニコンの支援活動「中学生フォトブックプロジェクト」に参加しています。ここでは、『限りなき進花』『未来をひらく』と名付けられたフォトブックを紹介してくれました。

フォトブック 『限りなき進花』『未来をひらく』

フォトブック 『限りなき進花』『未来をひらく』

パネルにして、展示も行ってきました。

©Natsuki YASUDA / studio AFTERMODE

どちらにも、学校での日常や修学旅行などの思い出がいっぱい詰まっており、被災地に在ること以外、自分たちと何ら変わることのない釜石東中学校の生徒たちの姿にふれることができました。また、壁面には、自ら撮影を行い、キャッチコピーをつけたポスターも掲示。「これなんか、プロも顔負けやなぁ!」と、ロザン菅さんも頷きながら鑑賞していました。

ナビゲーター 安田さんに写真を撮るときの気の持ち方についてアドバイスを貰った

ナビゲーター 安田さんに写真を撮るときの気の持ち方についてアドバイスを貰った

最後に、生徒会長の小川くんから、「自分たちが辛い思いをしたからこそ、他の人にはそういった経験をして欲しくないと思っています。中学生でも、しっかり防災に関して学ぶことで助けられる人がいることを、ぼくたちは知っています。今後、災害の被害を尐しでも減らせるように、他の学校でも災害に対する意識を高めていって欲しいと思います」という言葉を、中学生記者たちに贈りました。

同じ中学生。写真と文字にどのような思いが込められているのだろう。そして、それをどのように、伝えていくのだろう。  ©Natsuki YASUDA / studio AFTERMODE

同じ中学生。写真と文字にどのような思いが込められているのだろう。そして、それをどのように、伝えていくのだろう。

根浜の海に生きて、命の尊さを伝えるために

中学生記者の感想 ロザンの『いっしょに考えよう』コーナー