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南相馬市が直面している『いま』とは
いまは人が住めなくなった街、南相馬市小高地区を歩く(小高地区=避難指示解除準備地域)

いまは人が住めなくなった街、南相馬市小高地区を歩く(小高地区=避難指示解除準備地域)

浜通り地方の一都市で、太平洋に面し、穏やかで比較的温暖な気候に恵まれている南相馬市。台風の被害もあまり無く、北泉海岸はサーフィンのポイントとして人気のエリアです。また、重要無形文化財に指定されている「相馬野馬追」の開催地としてもその名が知られ、毎年7月最終土・日・月曜日の3日間は、全国から多くの見物客を集めていました。

これまでは自然災害に強い地という印象でしたが、やはり東日本大震災の被害は大きく、海岸線から2km付近まで津波が押し寄せて壊滅。加えて、福島第一原発事故の放射能漏れによって屋内退避区域に指定されたため、支援物資や情報が不足する危機的な事態に。この時、桜井勝延市長が動画サイトを通じて「兵糧攻め状態だ」と全世界に向けて窮状を訴えたのは有名なエピソードです。「相馬野馬追」のために飼育されていた馬28頭は、特例措置により福島第一原発より20km圏内から避難するなど様々な対応が取られてきました。

旧警戒区域内では、遅延がありながらも除染や災害廃棄物処理、生活インフラの整備が進行中。小中学校や生涯学習施設、スポーツ施設は今年8月末に復旧工事が完了する予定です。旧警戒区域外は、水道、下水道が本復旧。道路も被災道路124ヵ所のうち74ヵ所が本復旧しています。除染については、比較的線量の高い山際の8行政区の仮置場を確保。同意を得た行政区から除染を開始し、今年3月までに4行政区が完了しています。

小高地区内の店舗。壁は崩れシートがかけられたままとなっている -中学生記者 西村くん撮影

小高地区内の店舗。壁は崩れシートがかけられたままとなっている -中学生記者 西村くん撮影

震災後の現在、南相馬は、市民の誇りである歴史文化の継承と、復興の足がかりとなる新たな産業の創出を、ともに考えるべき局面に立っています。そして、それぞれ強い意思の下、地元で懸命に取り組む人々の姿が、今、まさに現れ始めています。

南相馬ソーラー・アグリパーク 代表 半谷 栄寿さん
'明日の復興を担う、子供たちの成長を支援' 南相馬ソーラー・アグリパーク 代表 半谷 栄寿さん

津波被災地(市有地)を活用し、太陽光発電所と植物工場を建設。自然エネルギーの利用と野菜栽培の体験学習を通じて、南相馬市の子どもたちの支援と地域復興を目指しています。1haの敷地に設置されたソーラーパネルで作られた電力は、約100kwを植物工場へ供給し、余剰分の約400kwは固定買取制度に基づき売電。また、工場で栽培された野菜は全量、地元の大型スーパーが買い取るシステムとなっています。ここでは、次世代を見据えた新しい産業の仕事体験に加え、実際に自然エネルギーの利点や問題点を考えながら体験できる学習プログラムを用意しています。

URL/リンク
http://minamisoma-solaragripark.com

中ノ郷騎馬会 代表 中島 三喜さん
'先人から受け継ぎ、後世に伝えるのが使命' 中ノ郷騎馬会 代表 中島 三喜さん

平将門が野生馬を敵兵に見立てて軍事訓練を行ったことが起源といわれ、その歴史ゆえ国の重要無形民俗文化財に指定されている福島県浜通り北部の伝統神事「相馬野馬追」。毎年7月最終土・日・月曜日の3日間、約500騎の騎馬武者によって盛大に執り行われていましたが、東日本大震災と福島第一原発事故によって一昨年は規模を縮小し82騎のみの参加となってしまいました。昨年は2年ぶりに通常開催が実現しましたが、原発事故の影響で餌の入手が困難であったり、津波で馬や武具、馬具などを流失した上、避難生活を送る騎馬会員の中には出場を見合わせるケースもあったりと、難題をいくつも抱えているのが現状です。

馬と一体になって疾走する騎手の迫力を間近で目撃。