魚町から北上して、唐桑半島の海岸線をたどったご一行。リアス式海岸らしい波打つようなドライブルートを進んだ先にある、北上町十三浜地区の漁業生産組合浜人の事務所にお伺いしました。
組合の理事を務める若き漁師、阿部勝太さんの案内で、まずは加工場の見学。そこで、安田さんは、釜茹で中のワカメを発見し、「ワカメは、お湯の中に入れると、黒っぽい色から明るい緑に色になってきれいなんですよ」と、ロザンのお二人に説明していました。「十三浜で採れるワカメは、宮城県で10年間ずっと高い評価をもらっているんです」と、阿部さんが持ってきたカゴを見るなり、思わずデジタルカメラでパチリ。「ホンマ、きれいな色をしていますね!」と菅さんが言うと、阿部さんもニッコリを笑顔で返答。「震災前と後では、ワカメの品質は違いますか?」という宇治原さんの質問には、「質はまったく変わっていません。むしろ、津波によって海水が掻き混ぜられたことによって栄養豊富になり、成長は良好なんですよ」と教えてくれました。
ワカメやホタテなどの生産物を、インターネットで販売し、新たな販路を切り拓いた浜人。「漁師のお仕事って本当、大変ですよね」という菅さんの言葉に、「実は、震災前は、僕らみたいな若手の漁師は、自分の仕事にそれほどやりがいを感じていたわけではなかったんです。こんな田舎でやれることなんて限られると思ってた。でも今は、海産物の販売を通じて全国のお客さまとコミュニケーションをとったり、僕ら自身がいろいろな土地に出向いて営業したりと、活動の幅が広くなりました。海外の方ともやり取りすることがあるんですよ!もちろん、毎日行なう生産の仕事にもやりがいはありますが、地元で漁師をしながら面白いことに挑戦できる今の状況に、大きな意義を感じています」と話す阿部さんの顔は、頼もしく輝いていました。
インタビュー中も、忙しく行き交う漁師さんたち。「若い方が多くて、ここは活気がありますね!」と、気づいた宇治原さん。
「この地域は子どもの数が多く、漁師の後継者も20代、30代の若者が多いんです。日本の漁師でその世代の割合は1割を切っているそうですから、すごく珍しい事例みたいですよ」。安田さんは、「若い世代の漁師さんが、こういった新しい取り組みを行なっているのが興味深いですね」と話すと、「水産業者は、高齢化と後継者不足が問題となっています。だから、僕らが率先して面白いことに挑戦し、それを示すことで道を示していきたいですね」と自信に溢れた表情。そんな阿部さんの姿勢に感じるものがあった宇治原さんは、「中学生が来たら、漁師になるよう勧めてみたらどうですか?」と言うと、「それ、いいですね!」と笑いながらうなずいていました。
そして、震災を振り返り、「津波で仲間を失い、改めて人と人との繋がりがいかに大切かを痛感しました。そんなことも、子どもたちには教えてあげたいですね」とも、語っていました。
ロザン
宇治原史規さん
「皆さん共通して言われていたのは、自分の故郷の素晴らしさを見つめ直す大切さですね。日常では見過ごしがちなことを、中学生たちにも考えてもらえるきっかけになればと思います」。
菅 広文さん
「お話を聞いた方々みな、知恵を出し合い、助け合って毎日を暮らしているんだと強く感じました。中学生の皆さんにも、お互い協力し合う大切さが伝わるのではないかと期待しています」。
安田菜津紀さん
「私も、東北に関わるようになってから2年が経ち、これまで、フォトジャーナリストとして被災地をめぐり発信してきましたが、今回の取材を通じてまだまだ新しい出会いの可能性を感じました。現地を訪ね、そこから何を感じ、何を学び取れるだろうか考えながら、私も中学生たちと一緒に体験していければと思っています」。
今回の出会いを通じて、新たな発見があったロザンのお二人と安田菜津紀さん。
この経験を活かしながら、全国各地から集まった中学生たちとともに5月26日、再び石巻を訪れます。
中学生たちそれぞれの視点から見た被災地・石巻の「いま」とは。そして、中学生ならではの発想による
復興とはどんなものか。彼らが見聞きして得た学びや感想を、次回レポートします。