福島市と二本松市で行った取材で聞いた話を基に、まとめのワークショップをロザンのお二人と安田さんとともに取り組みました。まずは、テレビ・ラジオ・新聞・SNSにジャンル分けをし、どのメディアが災害時に有効かを、速報性・正確性・災害対応力・拡散性などの点で評価する表を作成しました。また、自分たちの身の回りでどんな災害が起こるかを想定してリストアップし、その災害に対処するにはどんな情報が必要か、それはどんな手段で得られるかを考察しました。地震が少ない県、水害が多い地域など、それぞれ事情は様々。それだけにたくさんの意見が飛び出し、活発な意見が交わされました 。
熱心な議論が行われるなか、菅さんは「鳥取やったら、砂丘でラクダが大発生するんちゃう?」と、笑いを誘って中学生記者たちをリラックスさせる場面も。 テレビというメディアに深く関わるロザンのお二人も、興味深くワークショップに参加していたのが印象的でした。また、防災士の資格を持つ安田さんは、身の丈に合ったサイズの“防災袋”の用意を提案。今回の取材で学んだ携帯ラジオの他、災害時に必要となりそうなものを9つのマス目に書き出してもらい、ビンゴゲーム方式で楽しく確認しました。
昼食の後、中学生記者たちがカメラを手にして撮影したたくさんの写真の中から、特に印象深かったものを選んで感想の発表も行いました。福島県の鈴木姫花さんが描いた塩屋埼灯台の黄色いハンカチや巨大なロール紙、風雪荒ぶ仮設住宅の風景とバラエティ豊かにチョイス。そのすべてに、取材を通して感じたこと、学んだことを重ね、自分たちの言葉で綴っていました 。最後に、自身が撮影した陸前高田市の“奇跡の一本松”の写真を背に、安田さんがワークショップの総評と被災地への思い、防災士としての願いを中学生の記者たちに送りました。
佐々木 詩織さん(宮城県/大崎市立岩出山中学校1年)
同じ被災地である宮城県に住んでいますが、福島県はまた違った問題を抱えていると感じました。また、災害時は、ラジオや新聞など情報を確実に得られる手段を、あらかじめ知っておくことが大切だと学びました。
後藤 謙くん(山形県/山形市立第六中学校2年)
山形にも強い揺れがありましたが、それとは比べものにならないくらいの大きな被害があったことを知り、驚いています。ラジオや新聞などはそれぞれに違った特性があることを知り、それを熟知して活用できればと思っています。
高橋 冴和さん(埼玉県/松伏町立松伏第二中学校3年)
震災時は学校にいて、大きなパニックになったことを思い出しました。取材をした方みんな明るい笑顔で話してくれたことが印象的でしたが、やはり仮設住宅では重い空気も感じられました。いつも携帯電話に頼りがちですが、緊急時はどんな物でどんな情報が得られるかを考えて行動したいと思いました。
菊池 拓実くん(千葉県/足立区立第十一中学校2年)
震災後に東北を訪れることが無かったので、実際に現地へ来て大変な状況だったと知る取材となりました。災害時は電話が通じにくいので災害伝言ダイヤルを活用すると良いと教えていただいたので、いざという時のために心に留めておきたいと思います。
小竹 潤さん(石川県/野々市市立布水中学校3年)
テレビや新聞のニュースで震災の事は知っていましたが、実際に被災地へ来てみて、今まで知らなかったことを得られる機会となりました。今回の取材では、災害時におけるメディアの活用や命の大切さを学びました。
佐藤 友昭くん(岐阜県/岐阜聖徳学園大学附属中学校2年)
岐阜県ではもう、震災や原発事故に関して話題にすることも少ないので、今回の取材では復興の度合いと今後の課題をしっかりと知ることができました。災害に備えて、身近な場所で情報が得られる携帯ラジオなどを用意しておくべきだと思いました。
加藤 潤くん(三重県/暁中学校2年)
この取材では、メディアに関わる人たちが持つ使命感の強さにふれ、深く考えさせられました。そして、大きな災害に遭った時でも希望を捨てずに生きていくことも、いろいろな方の話を聞いて学んだような気がします。
久保 綾耶華さん(和歌山県/和歌山県立古佐田丘中学校3年)
ラジオ福島の大和田さんが言っていた、「人の死は数字で表してはいけない」という言葉がすごく心に残っています。また、防災袋には、電池と携帯ラジオの両方を用意しておきたいと思っています。
備 えりかさん(鳥取県/伯耆町立溝口中学校2年)
被災地から遠い県なので知らないことがたくさんありましたが、現地を見ることによって被害の大きさを体感することができました。油性ペンと紙というアナログな手段でも、災害時には大いに役立つと分かり、身の回りの人たちにも教えてあげたいです。
橋詰 結菜さん(福岡県/久留米信愛女学院中学校2年)
今回、初めて被災地を訪ねたのですが、光と影の両方を見ることができた気がします。災害時は、テレビや新聞などのメディアを活用し、上手に情報を得られるよう心掛けたいと思っています。
今回の福島市・二本松市の取材を含め、2014年度は岩手・宮城・福島で全6回の取材を実施。全国各地から集まった総勢49名の中学生記者たちが、2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災状況について学び、さらに、今後の大災害に備える「防災」についても考察を深めました。
第3回国連防災世界会議 仙台開催
国連防災世界会議は、国際的な防災戦略について議論する、国連総会で決議された国連主催の会議。1994年に横浜で第1回、2005年に神戸で第2回を開催しています。3回目となる仙台での会議には、193の国連加盟国と国連機関、NGOなどが参加。被災地である仙台市から復興を世界に発信するとともに、日本における防災の経験と知見を国際社会と共有し、国際貢献を行う重要な機会となります。
ネクストとうほくアクション「写真で綴る、被災地の『いま』を伝えるプロジェクト」では、今年度の活動の総仕上げとして、パブリック・フォーラムに参加します。
- タイトル未来に向けて ~建設業が果たす役割り・街づくりと中学生記者が考える防災~
- 主 催宮城県建設業協会
- 共 催河北新報社、ネクストとうほくアクションプロジェクト
- 協 賛ニコン
- 日 時2015年3月16日(月)13時開場、13時30分開演予定
- 会 場東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)大ホール
本年度最後の取材となる今回は「災害時の情報伝達」というテーマのもと、福島県の福島市、二本松市を訪問しました。参加した10人の中学生は、これまで知らなかった被災地の情報を知ることで、また被災地の現状を目の当たりにしたことで、多くのことを感じ取ってくれたと思います。
今回取材したラジオ福島の大和田新アナウンサーは、「メディアは人の死を数字だけで表してしまう」という話をされました。亡くなられた人の何倍もの残された人たちが、今なお深い悲しみに包まれています。残された人たちの声に耳を傾け、その情報を多くの人に届け、災害の恐ろしさを風化させないことがメディアの役割であり、それを知ることで一人一人の防災意識が高まるのだと思います。
また、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県内のみならず全国に約2万人が避難している浪江町の役場と町民が暮らす仮設住宅を訪問しました。取材した浪江町役場復興推進課の小島哲さんはバラバラになった町と町民をつなぐのが故郷の情報であると話してくれました。福島県外で避難生活を送る人たちは、浪江町の情報だけでなく、福島県の情報すら知る機会が少なくなっている中、町民に故郷の情報を伝え続けていく手段として希望する全町民にタブレット端末を配布する取り組みを浪江町は始めました。
今回の取材を通して、災害に備え防災グッズなどの“モノ”だけを揃えるのではなく、自分が生活する地域に潜んでいる災害の危険性、避難所までの移動経路など、事前に“情報”を得て行動することが自分の身を守る行為になるということを学んでもらえたと思います。“知る”ことから防災がスタートするのです。