ロザンのお二人と合流し、一行が次に向かったのは、大船渡地区消防組合消防本部 大船渡消防署。エントランスでは、消防団長の新沼竹美さんが出迎えてくれました。まずは、消防団の役割について簡単な説明が。消防団は、消防組織法に基づいて各市町村に設置される一般市民によって構成される消防機関のことで、普段は会社勤めをしている団員がほとんど。火災や地震などの災害が起きた際は、消防署と連携して活動に当たります。「でも、消防団員はボランティアではありません。また、消火活動や救助に見返りを求めることもありません」と新沼さん。花火大会など地域の大きなイベントがある際は会場内の警備なども担当し、「有給休暇を使って出動していますが、務めている会社の理解がなければできない仕事ですね」と教えてくれました。大船渡市では防災区域を12に分けて“分団”を設置し、1分団には60〜140名の団員が在籍。東日本大震災では、各地の団員が地域のリーダーとなって人命救助を行い、大いに活躍しました。しかしながら、活動中に命を失った団員もおり、22の屯所も損壊しています。おもむろに席を立った新沼さんは、背中に大きく“大船渡”と染め抜かれた半纏を取り出し、「団員としての正装です」とスーツの上からまといました。
「消防団員に求められるのは、義勇愛郷の精神。正しい事を行うための勇気を持ち、自分たちの故郷を守ることが使命です。このような未曾有の大震災にあっては、一人でも多くの市民を助けようと、団員の思いは一緒でした」と力強く語ってくれました。
大船渡市では、津波警報が発令された際、活動時間を20分とする「20分ルール」を規定しています。大災害が発生した直後、避難誘導といった消防団員として活動する時間を警報から20分と定め、それを過ぎたら退避を優先します。これは、団員に対する安全の配慮であり、団員が無事であれば以後、消防団活動を継続できるからです。「その20分間で何をするか決まっているのですか」という安田さんの問いに、「20分という時間は、宮城県沖地震津波のシミュレーションにおいて越喜来湾への第1到達予測時間が25分であること、東日本大震災では約30分で津波最大波高に達していることなどから設定されました。団員はそれぞれがいる地域、置かれている状況で的確に判断し、必ず自分自身が安全に退避できることを前提に、時間内にできることを行うよう指示徹底をしています」と答えました。
中学生記者たちは、平成25年3月から試験的に運用をスタートしている「高機能デジタル消防指令センター」も見学。
これは、最新の通信技術とコンピューター技術によって、119番通報の受信から出動までの指令業務をスムーズにし、消防団の業務遂行が最大限に発揮できるようにする画期的なシステムです。室内にはたくさんのディスプレイが配置され、様々な数値や画像が映し出されています。説明を受けている途中、119番通報のアナウンスがスピーカーから流れ、思わず緊張感が走る場面も。迅速に対応している所員の姿を見て、改めて大変な責務を負っている仕事なのだと感心していました。
新沼さんと一緒に消防署を出て、市民の緊急避難場所となった「加茂神社」へ向かいました。ここでは、石段を駆け上がるチームと迂回して坂道を走るチームで競走にチャレンジ。石段は段数が多くて急勾配、坂道はなだらかですが距離が長くなっています。青信号を合図に駆け出す一行。最初に到達したのはやはり石段チームでしたが、宇治原さんは上りきった途端、がっくりと膝を折りヘトヘトに。
5分以上経過して、坂道チームも現れましたが、息を荒くした菅さんは、「こっちの方が楽だなんて、団長に騙された〜!」とぼやいていました。ガイドの森さんは、「石段を無我夢中で上って助かったおばあちゃんは、その後、またチャレンジしてみたそうなんですが、半分も上ることができなかったそうです。火事場の馬鹿力が命を救ったんですね」と話してくれました。