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南相馬ソーラー・アグリパーク 代表 半谷 栄寿さん 考える力を養った子どもたちの、無限の可能性を信じて。

南相馬市の現状を視察した後、最初に向かった取材先は「南相馬ソーラー・アグリパーク」。広大な敷地に、ドーム型の施設やたくさんのソーラーパネルが建ち並び、未来的な雰囲気を漂わせています。ロザンと安田菜津紀さん、5人の中学生を出迎えてくれたのが、この施設の代表、半谷栄寿(はんがいえいじゅ)さん。「これまで、地元の小学生を受け入れてきたのですが、中学生の参加は初めてなので、とてもうれしいです!」と、満面の笑みで語りかけてくれました。

半谷さんの話に引き込まれていく。身近な問題から、エネルギーを理解する。

半谷さんの話に引き込まれていく。身近な問題から、エネルギーを理解する。

身近な問題から、エネルギーを理解する。

まずは、センターハウスに集まり、この施設の役割についての説明と“自然エネルギー”に関する講義を受けました。福島の子どもたちは、震災時の困難を経験したことで、全国からの支援への感謝と、自らも誰かの役に立つ大人になりたいという気持ちを身につけるきっかけになったとそうです。そんな自立心を子どもたちの中に芽生えさせるためには、自ら考えて行動する力を養うことが必要だと考えた半谷さん。そこで、仕事体験をしながら、今、世界的に関心が高まっている自然エネルギーを実体験するための施設と学習プログラムを創設しました。エネルギーが身近な場所にあふれていることを発見してもらい、地域への誇りと愛着、そして南相馬の復興への意思を育てたい、と熱く語ります。そんな半谷さんが用意したのは、水の入ったペットボトルを2つ合体させた実験器具。口のところで密閉され、逆さにしても下に落ちない水を、どのような操作で水を落とすかを5人に問いかけました。それぞれ試行錯誤しながら回答を模索。いろいろ試したなかで、水に渦を作れば下に落ちることを発見することができました。「まずは考えて、いろいろと試してみる。その繰り返しが大事」と、半谷さんはうなずきながらそう語りました。

中学生たちは“ソーラーエネルギー発電会社”の社員に扮し、パネルやケーブルの点検にチャレンジ。受け持ちのソーラーパネルを入念に調査します。

石油・石炭といった限りある資源だけでなく、枯渇しない自然のエネルギーを活用することがこれから重要になってくると話す半谷さん。自然エネルギーの一つである太陽光・太陽熱についても説明を行い、この施設の電力をソーラーパネルによる発電でまかなっている事実を教えてくれました。その現場を実際に体験するため、中学生たちは“ソーラーエネルギー発電会社”の社員に扮し、パネルやケーブルの点検にチャレンジ。受け持ちのソーラーパネルを入念に調査します。

パネルの角度や方向を変えて発電量の違いを調べる実験も実施。

また、パネルの角度や方向を変えて発電量の違いを調べる実験も実施。ここでは先輩社員としてロザンのお二人も参加しました。「一定の電力を得るために、太陽の真正面になるようパネルを動かせばいいんじゃないの?」と宇治原さん。半谷さんは、「それなら、どうして本物の発電所はパネルを固定したままなのでしょうね?」と問いかけます。「お金がかかり過ぎるから」ともらす中学生。その答えに、ロザンは「鋭い!大人の答えや!」と思わず感心する場面も。半谷さんは、「どれだけの費用をかけて、どれだけプラスの効果が得られるか。それを考えることが、自然エネルギーの活用する産業にとって最も重要なことなんですね」と話してくれました。

この施設の中核たるもう一つの機能、太陽光の電気でドームを支える植物工場についても言及。野菜が、円形の水槽の内側から外側へ生長している様子を観察しました。そして、この工場で実際に栽培されたリーフレタスとホワイトセロリを使い、新鮮野菜のサンドイッチも試食。その美味しさに思わず歓声があがりました。

体験プログラムの終了後、半谷さんにインタビュー取材を行いました。「ご自身は、どのような思いでこの施設を立ち上げたのですか」と質問。「福島に生まれた者として、何か役立つことがしたいというのが原動力。そしてまた、私は数年前まで東京電力株式会社の社員でもあり、福島第一原子力発電所の事故に関して申し訳ないという気持ちもありました」と、真剣な面持ちでそう答えました。そして、「ソーラー発電と野菜栽培を選んだ理由は何ですか」という問いには、「これからの子どもたちのために、長く継続できる仕組みづくりが大切だと考えました。自然エネルギー使った水耕栽培は、新しい農業としてこれから発展の余地がまだまだあります。栽培する野菜の種類を増やしたり、栽培工場を増やしたり、この施設の体験プログラムで学んだ子どもたちが受け継いでくれて、より進化させてくれることを願っています」と、展望を教えてくれました。

太陽光の電気でドームを支える植物工場

今もなお、震災の爪痕が深く残る小高区を視察。

伝統を継承し、祭り本番に備える騎手たちの誇りと責任。