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南三陸町産業振興課 及川 浩人さん 南三陸町の経済を支える、生命のサイクル。

最後に訪れたのは、水尻川の川岸にあるサケの孵化場。ここで待っていたのは、南三陸町産業振興課の及川浩人さんです。及川さんが立つ川の上の簗場(やなば)に行ってみると、眼下にたくさんの黒い魚影が。「産卵のために、川を遡上(そじょう)してきたサケですよ」と及川さん。南三陸町で6割の水揚げを誇る重要な基幹産業でしたが、震災直後は遡上の数がかなり減ってしまったそうです。以前は3ヵ所あった孵化場で約1,000万尾を放流していましたが、現在は1ヵ所しかなく、放流している数もその半分の約500万尾。2年後には、他2ヵ所の孵化場を復旧させて、元の数に戻す予定となっています。「ここで作業している方はご高齢の方も多く、早朝の大変な仕事なんですが、サケの水揚げ量を戻さない限り町の復興はあり得ないと考えている方ばかりなので、みなさん熱意を持って放流事業に携わってくれています」と語ります。

震災の年に海に出ていたサケが成長し戻ってきている
震災の年に海に出ていたサケが成長し戻ってきている

震災の年に海に出ていたサケが成長し戻ってきている

施設の入り口に設置された線量計。示されている値は非常に低い数値だが、中学生に緊張が走った。

「みなさんには、サケの採卵、受精の作業を見学してもらいます」と言って、及川さんたちは手際よく網でサケを水中から引き上げ、簗場の上にのせていきます。驚いたのは、その後。一尾ずつ木の棒で頭を叩き、カゴに詰めていきました。突然の事に驚く中学生たち。そんなことにはお構いなしに、サケの入ったカゴが次々とできあがっていきます。そして、そのカゴは採卵・受精を行う作業場へ。及川さんが雌のサケの腹を割くと、見慣れた赤い粒々があふれ出してきました。受精率の低い頭と尾に近い部分や、血がついて受精できなくなった卵を選り分けながら、白い洗面器に集められるサケの卵。「寒い時には、辛い作業ですよね?」とロザン菅さん。

及川さんは、「気温がマイナスになると、手がかじかんでしまうんですよ」と苦笑い。「でも、卵を手の感触で確かめるためには、必要なことなんですね」とロザン宇治原さんは感心していました。そこへ雄のサケを取り出して受精を行うと、「これを混ぜて水に入れれば、水温10度で24日ほどたてば孵化します」と及川さん。「これだけで、サケが孵化するんですか?」というロザン菅さんの驚きと一緒に、中学生たちも「え〜!?」と声を揃えていました。生命の神秘を感じつつ、南三陸町の復興を支える重要な事業の一端に触れる貴重な体験となりました。

採卵・受精を行う作業場

商店街を再興する熱意で、人が行き交う元気な町に。

中学生記者の感想 ロザンの『いっしょに考えよう』コーナー