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被災者の言葉は「未来を生きる教科書」 フリーアナ渡辺さんがエッセー出版

  • 2021-05-08 05:00:39
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東日本大震災からの復興に関わる人々の言葉を語り継ぐ活動を行う仙台市のフリーアナウンサー渡辺祥子さん(55)が、取材で出会った11人の軌跡をたどる「困難を希望に変える力-3・11 10年後のことづて」を自費出版した。被災体験にもかかわらず、前を向いて歩く人の「生きる力」を探るエッセーだ。
震災直後から交流する人々を紹介する。石巻市雄勝の被災地に花を植え、被災者と支援者の交流の場をつくった女性や、津波の教訓を伝える紙芝居を制作した南三陸町の女性。復興支援行事で「輝く太陽がなくなったら、私が小さく輝けばいい。小さな私でもだれかの心の光(中略)となるよう(同)頑張ります」と語った名取市閖上の少女-。それぞれの人生が重みを伴って迫ってくる。
小学生の娘を失った石巻市の語り部の男性は、震災10年を表す言葉を尋ねた渡辺さんに、「今日も元気にただいまを」と答えた。防災とは、「行ってきます」と家を出たら「ただいま」と、無事に帰ってくることだとの思いが込められている。
社殿が流された山元町の神社の女性宮司は渡辺さんの取材に、「『私の人生こんなはずじゃなかった』と言う人がいるが、今生きている現実そのものが私の人生だと思う」と吐露する。
宮司の言葉に渡辺さんは、「人生は豊かな意味で満たされている、しかも無条件に」、というアウシュビッツ強制収容所を生き延びたユダヤ人精神科医ビクトル・フランクルの言葉を重ね見る。
渡辺さんは2014年、被災地の人々との交流をつづった「3・11からのことづて」を出版。それを機に、被災者の言葉を伝える展示を仲間と仙台市内で始めた。
渡辺さんは「被災地の皆さんの言葉は、未来を生きる人の教科書になると思って活動してきた。10年積み重ねて、つながりを実感する。語り継ぎはこれからが正念場だと思う」と話す。
2000部を出版。880円。連絡先は3・11を語りつぐ会090(2889)3690。【2021年5月2日 河北新報朝刊 写真=著書を手にする渡辺さん】